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再現事業に託す想い

一般財団法人 R-INE塾 歴史文化まちづくり研究所

 代表理事 埜本 修

堀尾邸改修工事完了

如春庵「田舎家」 再現事業

 日本中が、観光客の誘致に奔走しています。

古民家を「再生」し、民泊や、カフェをやると、観光客は来るかとか、歴史建造物を「再現」して、外国人観光客は増えるか、など、真顔で、自治体が無い財源に知恵を絞っています。

 「再生」とは何を再生するのでしょうか。古い建物を改修し、再利用することでしょうか。「再生」とは日本人の生き方を含めた美しさ、賢さ、思慮深さに、秘められた暮らし方を再生することです。そうでなければ、建物だけ改修しても意味はありません。

 私は26才の時、銀行を辞めて独立起業しました。1980年代、高度情報社会の到来で、多くのベンチャー企業が世に台頭しました。私は業界のガリバーだったIBMと業務提携し、総合ソフトウェア産業を目指したのですが、「心のうちの何か」が、IT産業には特化させず、真逆の選択肢「まちづくり会社」を指向したのです。

以来40年、建物を建て続け、私は「心のうちの何か」の正体を、つきとめたいと考えていました。

 肌では、感じていても確信がありませんでした。確信は、2011年東日本大震災が列島をおそった大惨事を、テレビ中継でクギ付けで、見ていた時です。私は当財団の前進となった、NPO法人R-INE塾で、黒澤明監督の生誕100年祭を、比叡山延暦寺で開催する直前でした。多くの催事が自粛する中、開催か、中止か、判断に悩みました。

 しかし、あえて開催を決断しました。「心のうちの何か」を、つきとめたからです。

 この大惨事の中、人々が助け合い、お互いを気遣う姿に、「日本人はなんと精神性の高い民族なのか」と、世界中が驚愕し、感動しました。日本中が、「気づき」涙しました。そして、今までの在り方を考えた事でしょう。私の「心のうちの何か」は「まちづくりの哲学」というものです。

 この哲学がまちづくりの肝でなければ都市開発は、ただのテーマパークで、見世物小屋です。そこには、地域の人々の暮らしがあり、匂いや色つやがあり、地域特有の文化がある。まちづくりは、そこに根ざしたものでなければ、再生することは、およそ不可能です。

 敗戦後の日本は、経済の豊かさを、国づくりの最優先として進めた事で、まだまだ残っていた日本の姿を、こわし始め、ふるさとをお金にかえた「まちおこし」ならぬ「まち壊し」を推進してしまった。

 東日本大震災、この列島をおそった大惨事が、日本人の「わすれもの」に、気づかせてくれた。だから、「これからの国づくり」は、このことが、礎とならねばならないと思います。ですから「日本の精神文化の再生」が「まちづくりの哲学」です。

 外国人観光客を誘致する為の手段で古民家を再生したり、歴史建造物を再現するのではないということです。豊かさや便利さ、居心地の良さは、古いものを守りたいと、矛盾することはありません。「調和」というバランスこそ日本人の生活の知恵です。

 

 当財団は、この「まちづくりの哲学」を軸に、歴史建造物の再現や歴史街道の再整備事業を推進し地域社会のまちづくり活動に貢献することを設立趣旨としています。

 皆様には、当財団の活動に、ご理解ご協力賜り今後ともご指導くださいますよう、何卒、宜しくお願い申し上げます。

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